平成14年開園 「平岡公園」について
~ 昭和57年からの構想に基づき造成された公園 ~
1.「平岡公園」の位置と施設
「平岡公園」は、札幌市の中心部より南東に11kmに位置し清田区平岡と里塚にまたがる公園です。「道央自動車道」(札幌南インターと北広島インターとの間)と「札幌新道」を挟むように東西に分かれて所在しています。
東側(下図の上側)18ヘクタールは、多目的広場・地球の広場・パーゴラ広場・遊具広場や散策路、壁泉(へきせん)が設定されてあり、また、スポーツ施設として野球場・テニスコート・ゲートボール場が設置されてあります。
西側(下図の下側)48.4ヘクタールは、起伏の豊かな地形を活かしたすり鉢状の梅林、自然のままの山林や散策路、自然観察ができる人口湿地や池、芝生広場、パークゴルフ場があり、「道央自動車道」に沿って三里川が流れています。
全面積が、66.4haの広さを持つ公園となっています。
「平岡公園の位置と施設」 (上方が東となります)

この「平岡公園」は、豊かな自然を生かし市街地の周辺に沿って公園や緑地による「緑のネットワーク」を造ろうとの構想に基付き、昭和57年から札幌市で進められている「夢のグリーンベルト構想」の拠点公園の一つとなっています。
2.「平岡公園」の沿革
「平岡公園」は、現在、住宅街の中の公園となっていますが、明治15年頃には「陸軍省御用地」(140万4千坪・約468ha。注:1haは、3000坪です。)の一部でした。
その後、明治27年(1894年)7月「山鼻屯田給与地」として下付され、山鼻屯田兵の個々の所有地の一部となりました。
しかし、起伏に富んだこの地の開墾は難しく、ほとんどが売りに出され、三里川沿いの湿地(三里川の支流や湧水が流れていました。)を水田として稲作を目指す人たちによって開墾されて行きました。
崖地に近い立地になっていましたから艱難辛苦の作業が続いたものと想像されます。
崖上の丘陵地帯(山林地帯は約半近くです)は、生活に必要な伐木・薪採り・炭焼き(窯跡を見ることができる)等に利用されたようです。
平岡公園東の住宅地「ライブヒルズ」の様な割合平地の箇所は、農耕に適していましたから、酪農や畑作地として開墾されました。
下図は、明治27年(1894年)7月「山鼻屯田給与地」に下付され土地を、現在の地図に写し位置を特定したものです。ほぼ四角形の敷地でした。
中央の横線は、当時白石村(上側)と月寒村(下側)の境界となります。
〇「所有地総区域實測連絡圖」(山鼻屯田給与地)のおよその位置関係

図の上方が、やや北です。
右上角は、上野幌2条6丁目
(雪印種苗センター付近)
左上角は、大谷地病院の北角
<白石村と月寒村の境界>
中央右の通りは、東栄通り
中央左の通りは、東北通り
右下角は、里塚緑ケ丘3丁目
(ホクレンショップ付近)
左下角は、中央バス平岡営業
所の北角
上図の右下に当たる約7分の1の土地が、現在の「平岡公園」として造成されました。
明治当初から昭和の30年代まで、「道央自動車道」は、三里川が流れ深い崖地となっていました。周辺には幾筋もの支流・湧水があり、起伏のある地形が形成されていました。
「山鼻屯田給与地」原本の模写図を次に掲載致しますので参照ください。
「所有地総区域實測連絡圖」(筆者の模写図) (原図 北海道大学北方資料館所蔵)

図には、「白石村大字白石村字野津幌」及び「豊平村大字月寒村字厚別」に所在した「山鼻屯田給与地(所有地連絡図)」と記してあります。(右側がやや北側となります。))
「所有地連絡図」とは、現在の「地域の住宅地図」に当たります。
黄緑色の7か所が「公有地」で、残りの170か所が「給与地」となっていました。
総面積が、140万4000坪(約468ha)と記してあります。
1か所当たりの区画の平均面積は、約8,200坪(約27000㎡)となります。
(注:道路用地・河川の敷地等を勘案すると、もう少し小さくなります。)
「平岡公園」の全面積が、66.4haですから、給与地の7分の1が公園となった事になります。
上図での「平岡公園」の位置は、左下側(南東部)となります。斜めにラウネナイ川(三里川のこと)が流れていました。
清田区の住宅地への転換は、昭和30年代にはじまりました。「平岡公園」周辺の土地は、昭和40~50年代に入って造成が行われ、上野幌・平岡・里塚地域がベッドタウンとして発展を見ることとなります。
但し、「平岡公園」の土地周辺は、住宅地とするには難しい箇所と想定されたのか、自然・山林のままの状態となっていたところ、札幌市の「夢のグリーンベルト構想」の拠点となりました。昭和52年2月10日北海道告示第332号によって都市計画(公園計画)が決定し、昭和57年より造成が始まりました。
昭和57年(1982年)「総合公園平岡公園」の造成工事が着手される。
昭和62年(1987年)5月「平岡公園梅園」が一般公開される。
平成 3年(1991年)3月「平岡公園」(平岡220・里塚14)が一部開園する。
平成14年(2002年)に開園しました。
平成16年(2004年)に完成に至りました。
「総合公園平岡公園」には、梅林・芝生広場・遊戯広場・木道・アーチ橋・トイレ・野球場・テニスコート・ゲートボール場・噴水・管理事務所などの施設が完備されました。
3.「平岡公園」東地域の施設の概要
「平岡公園」の東側の施設について確認する事とします。
(1) 野球場(軟式)・・・野球場は、平成20年(2008年)4月に完成しました。
野球場の広さは、両翼95m、中堅120mとなっています。
グランドの外野は芝張です。
利用期間については、4月下旬から11月20日までです。
有料ですから管理事務所と対応が必要です。
<平岡公園管理事務所電話: 011-881-7924 >

(2)テニスコート(硬式)

テニスコートは、オムニコート6面が設置されてあります。利用期間については、4月下旬から11月20日までです。有料となります。管理事務所と対応が必要です。
左は、「平岡公園管理事務所」です。
電話 011-881-7924
「平岡公園管理事務所」は、平岡公園の(東地区)に所在しています。
住所は、札幌市清田区平岡公園1番地1号 です。
「公園管理事務所」へ入るためのスロープが整備されてあります。
(3)ゲートボール場
ゲートボール場は、クレー舗装の3面が設置されてあります。
利用期間については、4月下旬から11月20日までです
(4)多目的広場などのこと 下記の写真は、多目的広場です。

周りが樹木で囲まれ、広い芝生が敷き詰められた、ゆったりとした空間となっています。
広場には、多目的広場の他に、地球の広場・パーゴラ広場・遊具広場があります。
利用期間については、4月下旬から11月20日までです。
(5)「遊具広場」のこと


上と左の写真は「遊具広場」です
「遊具広場」には、ネットクライミング・ブランコ・すべり台など、多くの遊具が取り揃えられています。
小さなお子さんから、年長のお子さんまでが楽しめるようになっています。
(6)「地球の広場」に隣接した斜面
左の写真は「地球の広場」です
「地球の広場」には、太陽系の惑星配列を、地球を中心として表現した造作物が配置されてあります。
冬季には隣接する斜面を利用してスキーやソリ遊びができます。
緩やかな斜面が遊びの場となります。
(7)棚の連なり「パーゴラ広場」のこと
「パーゴラ広場」の「パーゴラ」は、「軒先・庭などに造る格子状の棚」のことです。
左の写真は「パーゴラ広場」の曲線となったひさしの棚となっています。
夏の日差しを避け、日陰の場所を造り、フジなどの蔦(つた)植物を絡ませて涼しい環境づくりとなります。
4.「平岡公園」西地域の施設の概要
「平岡公園」の西側の施設について紹介する事とします。
(1)梅林 広さは、6.5haの面積があります。

春の「梅林」です。 敷地全体に咲き誇った紅梅・白梅が見事です。
札幌近郊で最大級の「梅林」となっています。
「梅林」には、豊後性の紅梅種と白 梅種の梅が4:6の割合で、1,200本植林されています。
平年は、5月頃が開花時期となっています。
毎年、多くの来園者が訪れます。
(2)湿地・人工湿地・池
湿地には「木道」が設置されてあり、周辺を散策することができます。
全国的にもあまり例のない人工的に造られた湿地で、かつて石狩平野に存在したミズゴケ・スゲ群落主体の湿地の再現を目指して造成したそうです。
「人工湿地」は、平成9年(1997年)より造成を始め、平成14年(2002年)に完成・開園となりました。
(3)はらっぱ
市民参加の造成エリアとなっています。
(4)花の広場・芝生広場
上記の2つの広場の利用期間については、4月中旬から11月下旬までです。
春はチューリップやスイセン、初夏にはシャクヤク、夏にはムクゲなどの花が楽しめます。
(5)梅の香橋
全長70mの木製人道アーチ橋です。1993年(平成5年)完成しました。

上の写真は、「梅の香橋」と梅園へ通じる散策路です。
(6)時計塔

(7)パークゴルフ場
パークゴルフ場は、2コース(本設1コース、仮設1コース)、各コース9ホールが設置されています。利用期間については、4月下旬から11月上旬までです。
5.「平岡公園」の自然(植生や生き物など)
<この項については、「平岡公園」のHPを参照しました。>
公園の山林は、コナラ(ドングリ)の北限に位置し、キタキツネやカワセミなどの動物やコクワガタやオニヤンマなどの昆虫類、エンレイソウやミズバショウなどの植物、エゾアカガエル、イバラトミヨ(トミヨ)などの両生類や魚類など様々な生き物が生息しています。
湿地はヨシを主体として一部ではカサスゲやミズバショウが群落を形成し、エゾノリュウキンカなどを植栽していいます。
主な樹木はヤナギやハンノキで、天然林(自然林)の箇所も所在しています。
湿地では1年を通じて多くの湿性植物が花を咲かせ、早春にはエゾアカガエルの卵塊が見られ、夏にはオニヤンマが飛び回ります。秋になると周辺の樹木に美しい果実が実り、ノリウツギの花はドライフラワーとなって冬遅くまで枝に残っています。
人工湿地は、ミズゴケ属やスゲ属群落主体の湿地再現を目指して造られました。
人工湿地の周辺は、あえて草刈り回数を減らし昆虫が住みやすくなるように草丈を高くした「はらっぱエリア」と、園内の樹林の種子から育てた苗木を植栽する「森づくりエリア」があります。
園路沿いや沢の周辺では、早春のキタコブシ(コブシ)から始まりオオバナノエンレイソウ、キツリフネなどの花々が秋頃まで見られます。
人工湿地とはらっぱ周辺区域には、ミズゴケやモウセンゴケなどの珍しい植物やサギスゲの群落が見られます。
広い敷地には多くの施設が設置されてあります。散歩にスポーツに、お子さんとの遊びや季節の草花、そして、鳥、昆虫・カエルなどの生き物に接する事ができます。
夫々の方々の願いに応じてくれます。存分に楽しんで頂きたいと思っております。
6.まとめとして 「平岡公園」のおよその標高と稲作づくり

公園の中央を走る道央自動車道の標高は、約30m~35mですから、かなりの高低差のある公園となっています。元々は、三里川の川筋があり、長い年月をかけて浸食した深い谷間の公園です。三里川は、「ラウネナイ川」と呼ばれた時期もあります。「ラウネナイ」の意味は、深い峡谷(V字谷)の川という「アイヌ語」です。
50年程前までは、この谷合の土地と三里川の用水を利用して稲作づくりが行われていました。決して広い田圃ではなかったでしょうが、川の左右に水田を試みたのです。
居宅は、川地より急な坂を上った箇所に造られ、稲作のために毎日その坂道を上り下りしながらの作業でした。降水により洪水になる事もあり、決して悠長な稲作づくりではなかったようです。
この「峡谷の川」の様子をしっかりと捉えた川筋と用地でしたが、そこの土地柄を生かして「高速道路」が建設される事となりました。「道央自動車道」です。
そして、その両側の土地が、住民の憩いの場となるように設計されました。
「平岡公園」は、四方が緑に囲まれた緑いっぱいの公園です。散策や遊び・スポーツとご自分のご意向に合ったように活用されてはいかがでしょうか。
○ 平成10年頃、「平岡公園」周辺を上空から撮った写真があります。
平岡東地区の発展の様子と「道央自動車道」の道筋、隣接する野幌川と周辺の緑地帯・里塚地区・里塚緑ヶ丘地区・平岡地区が一目瞭然の1葉となっています。
「平岡公園」の位置関係を捉える参考として頂けると幸いです。
平成10年(1998年)・丸紅(株)作成・土地販売のパンフレット より
ほぼ、「平岡公園」の造成が終えている状況が窺えます。
丸紅(株)作成・土地販売のパンフレット
「ライブヒルズ」より
・平岡公園梅林
・野球場
・テニスコート
等が配置されています。
記:きよた あゆみ(草之)